題名通り。

 「完璧な涙」がどうだったかは忘れたが、「イカロスの誕生日」の時は小説の地の文に相当する部分を
ナレーターが読んで情景なり心理描写を補完するという形で、今回もそのパターンだった。地の文で伝わる
情報が多いSFという作品をラジオでやるなら仕方ないし、違和感のない程度で問題なかった。*1


 朴璐美演じる白石亜紀は、感情のこもった声で35年間を演じ通していてとてもよかった。余談ながら
∀ガンダム」や「鋼の錬金術師」での好演ぶりから少年声の人だという誤ったイメージを抱いていたが、
少女からおばさんまで幅の広い声の人だと再認識した。あとコンピューターの声の人(名前失念)に、同様に
劇中の声で自分の名前を言っていた千葉繁@砂漠の行者を思い出して、えー、テラナツカシス?


 ナノマシンの存在を「細胞」と言い換えてアレンジしたのは、ハードSFを読まない人むけの親切設計で、
かつ話が破綻しないようにうまくまとめていて成功だったと思う。細かいところを挙げれば居住トーラスで
ハードシェルスーツのメットを外してしまうのはどうかと思った。特にその後独自の展開があるわけでも
なかったし、別にコンピューターの声の人に「魚の腐ったような臭い」って言わせればよかった訳だし。
最後にラジオドラマならではのいい所だったと思ったのが、艦隊の発進式で文中で言及された楽曲が流れ
ながら話が進んだところ。当然やるとは思っていたけれど、予想以上に盛り上がった(自分が)。宇宙空間で
音がした件についてはノーコメントで。ラジオドラマだしな。


 原作の醍醐味の一つであろうビルダーの存在形態については、本質部分(だと俺が思っている)「集合
意識状態が普通であって、個の概念はあるけれどそれはフツーじゃない」を抜き出して、短い尺に合わせて
いたんだと思う。
 結論。久々のSFラジオドラマで良作だった。ラジオドラマで興味を持った人は原作も読んでみると吉。大吉。

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

*1:えらそう